基調講演1

林 和弘 氏 「オープンサイエンスの潮流とCode for Science」

講演日時
2023年9月2日(土)13:50~14:50
講演内容

科学と社会のあり方をデジタルネイティブに変容させようとするオープンサイエンスの潮流はG7やUNESCO等世界の主要なアジェンダの一つとなっている。このオープンサイエンスの潮流を”Code for Science”の観点からレビューし、図書館を含む学術情報流通に関係する組織や個人の変容を促す。

講演者プロフィール

文部科学省科学技術・学術政策研究所データ解析政策研究室長、東京大学大学院で有機合成化学を学び、日本化学会で電子ジャーナル化とオープンアクセス対応についてそれぞれ黎明期に携わる。現職では、オープンサイエンス政策のための調査と実践に取り組む。日本学術会議特任連携会員、G7オープンサイエンスWGメンバー、UNESCOオープンサイエンス諮問委員等、アカデミアと政策のトップダウンの仕組みづくりに携わりながら、研究データ利活用協議会(RDUF)、Japan Open Science Summit等の草の根の活動も立ち上げから関わり、そのすり合わせ行っている。情報科学技術協会(INFOSTA)では副会長とシンポジウム実行委員長として学会のDXにも挑戦中。

基調講演2

永崎 研宣 氏 「理想の"デジタルアーカイブ"構築奮闘記」

講演日時
2023年9月3日(日)10:45~11:45
講演内容

1995年、大学院生時代にWebに出会って以来、理想の知識基盤としての「デジタルアーカイブ」の構築に向けて、システムの開発や研究、教育、標準化活動などに継続的に取り組んできた。今回は、Webや「デジタルアーカイブ」が発展する中で報告者が奮闘してきた模様を報告する。当方の経験談が、何らかの形でcode4lib Japanに参加される皆様のお役に立つことがあれば幸いである。

講演者プロフィール

博士(文化交渉学・関西大学)。筑波大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学後、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所COE研究員、山口県立大学講師・准教授を経て一般財団法人人文情報学研究所の設立に参画し、現在に至る。近年の編著書は、『人文学のためのテキストデータ構築入門』(文学通信 2022年)『欧米圏デジタル・ヒューマニティーズの基礎知識』(文学通信 2021年)『日本の文化をデジタル世界に伝える』(樹村房 2019年)等。また、メールマガジン『人文情報学月報』(https://www.dhii.jp/DHM/ )の編集室担当として、国海外の人文学におけるデジタル技術の応用に関する発信に携わっている。その他、論文等については⇒ https://researchmap.jp/knagasaki

通常発表セッション

15分の発表時間と5分の質疑応答時間(予定)が与えられます。

日本の学協会の著作権ポリシー確認ツールについて

発表者: 青柳和仁(島根大学附属図書館)

機関リポジトリに学術論文を搭載する際には、出版者の著作権ポリシーを確認する必要があり、日本の学協会の著作権ポリシーをまとめているものとしては、オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)が管理しているSCPJがある。このSCPJをソースとして、ISSNやNCIDから著作権ポリシーを素早く検索できるツールを開発・公開した。 本発表では、このツールの開発背景についても触れながら簡単な紹介を行う。

GakuNin RDMとChatGPTを使ってプログラミングを手軽に業務に活用する一試案

発表者: 芦北卓也(九州大学附属図書館)

九州大学ではGakuNin RDMデータ解析機能の実証実験に参加し、その試用版を利用可能になりました。研究者ではない図書館職員でも業務用パソコンに特別な環境構築をせず、クラウド上で仮想環境を作成しブラウザ上でPythonやRのプログラムを開発・実行できます。 さらに話題のChatGPTを利用することでCrossref APIやUnpaywall APIを用いたデータ取得が容易になりました。プログラミング初心者でもChatGPTにやりたいことを簡潔に伝えるだけで実行可能なコードを生成し実務に役立てることができます。 本報告では専門的なプログラミングスキルをもたない大学図書館職員がGakuNin RDMとChatGPTの組合せで手軽にプログラミングを業務に活かす事例を示します。PythonやRの潜在的可能性に関心をもつがスキルはもたない一般的な職員にとって本手法は有望なアプローチとなるでしょう。

JAIRO Cloud上のメタデータをWebサイトで活用する

発表者: 林賢紀(国際農林水産業研究センター)

日本国内では機関リポジトリ環境提供サービスJAIRO Cloudを機関リポジトリとして利用する機関が多く、2022年度末でその数は大学、研究機関等714機関に達している。JAIRO Cloudで入力、蓄積されたメタデータは主に学術機関リポジトリデータベース(IRDB)を経由してCiNiiやジャパンリンクセンター(JaLC)などに提供され、学術情報の効率的な流通に貢献している。また、これらの運用が可能なよう、JAIRO CloudではXMLやJSON形式でのメタデータの出力機能を有している。 本発表では、主に自機関Webサイトで公開しているコンテンツとの統合的な運用を目指して、JAIRO Cloud上のメタデータをCMSの機能によりWebサイトに取り込み利用する手法を紹介したい。

マスターデータ管理と生成型静的ウェブによるデジタルアーカイブ〜サスティナブル・アーカイブ・ギャラリーの構築〜

発表者: 丸山高弘(NPO法人地域資料デジタル化研究会)

NPO法人地域資料デジタル化研究会では、持続可能なデジタルアーカイブについて調査研究を行うなかで、ウェブサイト上のシステム構築によるデジタルアーカイブの持続性に対する課題解決の方法を考えてきました。そして2023年においてたどり着いた持続可能なデジタルアーカイブのスタイルを構築するに至りました。基本は、マスターデータの管理と共有のための静的ウェブによるデジタルアーカイブです。それまでの経緯と具体的な製作方法について発表いたします。

図書館を使った探究学習への生成AIの活用

発表者: 高橋菜奈子, 大芝健人, 大津毅朗, 中井晴菜, 平松和馬, 藤村拓未, WANG XIAOTONG(東京学芸大学附属図書館, 東京学芸大学大学院修士課程教育支援協働実践開発専攻)

Moebius Open Libraryは図書館と学習・学術の間で「知の循環」を促すことをコンセプトに、新しい技術を取り入れながら学びを促進する活動を行ってきた。さまざまな専攻の大学院生と協働し、探究学習に生成AIを取り入れた実践的活動について報告を行う。 具体的には、中学生数名のグループに大学院生1名がファシリテーターとして加わり、図書館を使った探究学習を行った。「問い」をたてるためのフックとして、フィクション作品の一場面を科学的に解説する「空想科学」の手法を用い、中学生がまとめたレポートをChatPDF(生成AI)に読み込ませ、第三者がChatPDFと対話するという「勝手に空想科学AI」というワークショップを行った。生成AIとの対話ログを見ることで、中学生が気づきを得て、探究学習を深化させることを狙った取組みである。 本取組みの活動概要と生成AIを活用したWSの実際および課題を報告する。

異世界文化財探索者の冒険ー未知の可能性への道を照らすGISー

発表者: 高田祐一(国立文化財機構奈良文化財研究所)

図書検索は、タイトルや著者などへのテキスト検索が一般的である。しかし、文化財報告書では、タイトルが内容を表さないため、必要とする報告書を特定することが困難であった。奈良文化財研究所では、2021年に60万件以上の文化財に関する時空間情報を整理した文化財総覧WebGISを公開した。GISの各地物には書誌情報へのリンクが設定されており、地図から必要とする報告書へアクセスすることができる。テキスト検索では、用語に関する専門知識が必要であり、一定の専門家であることが暗黙の前提であった。しかし、地図であれば、誰でも直感的に検索することが可能となる。まさに未知の文化財への道となりうる。

ライトニングトーク

1件あたり5分のプレゼンテーションです。 開催当日に募集します。